歓声が、すべての音楽をかき消した。


「え!」

新幹線を降りた理香子は呼び止められ…衝撃の出来事を告げられた。

そして、それを告げた熊五郎に、驚きの顔を向けた。

その美しさに、思わず顔を赤らめながら、熊五郎は頷き、同じことを口にした。

「君の…編入手続きは、完了している。君は、修学旅行を終えた時点で、我が大月学園の二年になる」

それは、驚愕の事実だった。

理香子は、何一つ知らされていなかった。

とうわけで、理香子は大月学園に通っていた。

廊下を歩く度に、歓声がわく。

そんな直接な反応を、理香子は受けたことがなかった。

鈍感な理香子でも、照れてしまう。

「理香子さま〜あ!」

モデルのような理香子の姿を見ようと、廊下から生徒が顔を出した。

(これが…女子校かあ)

理香子は、ため息をついた。


「姫様!」

その取り巻きの中には、うっとりとした表情を浮かべる桃子もいた。





「はい…。転入の手配は済ましております」

テレビ局の廊下を歩きながら、蘭花は携帯で話していた。

「彼女を、引率者に指名したことで…広陵学園の陥落時の混乱から、守ることができましたし」

蘭花は、関係者とすれ違う度に、携帯を下ろし、笑顔で頭を下げた。

蘭花は廊下を曲がり、人通りの少ない方を選んだ。


「心配いりませんわ。お婆様…。すべては、予定通りです」

蘭花は、にやりと笑った。

しばらく、携帯の声を静かに聞いた後、

「はい。もう…絞れました。2人までに」

蘭花は目を細め、

「そうです。まだ…目覚めていません。本人にも…自覚もないようです。月の女神の生まれ変わりであるかもしれないという…」

足を止め、廊下の壁にもたれた。

「広陵学園の件は、予定より少し…早かったですが、計画に狂いはありません。スパイも潜入させましたし…」