「まったく学校の周辺以外で、怪人がでるなんてな」

何とか騒動が治まった京都駅から、バスに乗り込んだ生徒達。ほっと胸を撫で下ろした熊五郎。

九鬼は、一番前で黒の乙女ケースを見つめていた。


「今さっき、黒谷も合流したしな…。後は、結城だけか」

熊五郎はまた、ため息をついた。

一番後ろに乗り込んだのは、黒谷蘭花。

普段は、芸能活動をしているアイドルの卵である。

何でも理事長の孫であるということで、あまり出席をしなくてもいいという特別待遇を受けていた。

今日も広島で、仕事を終えて、京都駅で合流したのだ。



「クツ」

九鬼は乙女ケースを握り締めた。

「生徒会長…」

その様子を、隣で見つめる早奈英。




九鬼の持つ乙女ケースは、いわば不良品である。いつおかしくなっても、不思議ではない。


(乙女ブラックに…なれないかもしれない)

それに、京都駅で見た…もう1人の乙女ブラック。

(あれが…真の乙女ブラック)

九鬼の持つ乙女ケースが、反応しなくなったと同時に、乙女ソルジャーになれなくなった。

それは、何かを暗示しているように思えた。


「生徒会長…」

苦悩する九鬼の手に、そっと早奈英は手を添えた。

「早奈英さん?」

はっと我に返って、顔を上げた九鬼は、微笑む早奈英と目が合った。


その様子を横目で、加奈子が見ていた。