掴まれた腕
2人きりで、歩く廊下。
…やっと、
2人だけの時に
その手で、
強く触れてくれた…
欲しかったはずの優斗の手は、まるで私が逃げないように強く力が籠っている…
…違う。
私が欲しかったのは、
こんな乱暴な手じゃなくて優しい手だった…
「 神菜、鍵 開けて 」
連れて来られた屋上の扉の前で立ち止まる。
言われた通りに、ポケットから扉の鍵を出して
扉を開ける…
外の空気は、
もう冬が近付いているようで、少しだけ肌寒い
だけど、
少なからず頭に血が上っている私と優斗にとっては、それが逆に良かったのかもしれない…
冷静になって話すことが出来た…
タモリ君は本当に
ただの部活の後輩であること。
好きじゃないし。
付き合ってもいない。
私とタモリ君の事はいろいろ話した。
だけど
優斗はユリとの事は、
なにも話そうとはしなかった…。
私も、
なにも聞けなかった…