新会社、新店舗への再出発は思いの外大変な仕事だった。

何の設備もない古びた大きな倉庫。

内外装工事どころか、腐った床めくりから仕事は始まった。

取引先すら決まっていない状況に、“始めようと思う”と言う社長の言葉は本当に“思う”だったんだと溜息が出た。

しかし、そのバタバタとした多忙さがあの事件を忘れさせ、身体と頭が夜の仕事から昼の仕事へ順応するにつれ、あの店への嫌悪感すら薄らいで行った。