おとうさん、おかあさん、英二…
いままでありがとう。


月はこの得体の知れない世界で息堪えます。


さようなら


オコジョは顔近づけ、フンフンと匂いを嗅いでいる。生暖かい鼻息が顔に当たる。

いよいよオコジョに食べられてしまうのかと目をきつくつむった。

しかし、覚悟した痛みはいつまでたってもおとずれなかった。

おそるおそる目をあけるとオコジョの姿はなく、キョロキョロと辺りを見渡すとオコジョは月には見向きもせず通り過ぎ、遥か後方をずんずんと歩いていき、やがて森の中に姿を消した。


「た、助かった。一体なんだったのよ、あいつは」

ふいー、と安堵の息を漏らす。


_