店内では私の甘くもどかしい気持ちを汲み取るように、コルトレーンのサックスが甘い音を奏でていた。
キッドとミノルと貴志がいつものようにそこにいる。
キッドは私を見るなり、うん?と顔をしかめた。
「ハル、いつもよりべっぴんじゃねェか」
私が自信たっぷりに微笑むと、ミノルと貴志がこちらを見た。
ミノルは驚いて口をぽかんと開けている。
「そう?」
「化粧もばっちりキメてよ、何があったんだ」
私は口元を緩めながらいつものミノルの隣の席に、何も言わず座った。
「……ほんとだ」
ミノルが言う。
私は笑顔でこう言った。
「いつもお城を守ってくれてありがとう」
いよいよ三人はあっけにとられて呆然としている。
可笑しくなって、くすっと笑った。
「えっと……お姫様、今日は熱でもあンのかい?」
おどけたようにキッドが尋ねる。
「そうね、今日は何だか熱っぽいんだ」
きょとんとする男たちを尻目に、白井にジンを頼んだ。
そして言った。
「ミヤ・マジックよ」