クラウンに着くと二人して座り込み、声をあげて笑った。
声をたてて笑う自分に驚く。

道行く人は、ブッ飛んだのかよ?といぶかしげな表情で私たちを見ている。

「ミヤ、走ってすぐに座り込むと、痔になっちゃうんだよ」

「ほんとかよ?
 なら、ハルもじゃん。
 道連れだな」

私たちは顔を見合わせるとぷっと笑い、よいしょ、と腰をあげた。

「ハル、今夜は知り合いの写真館で現像するんだ。
 だから今日はここまで。

 ……寂しいだろ?
 俺と別れるの」

ミヤはからかうようににやりと笑って言った。

「寂しいのは、ミヤの方だろう?」

私もそう返す。

「寂しいな。今夜は恋しくて眠れねえよ」

私が笑っていると、

「今日は本当に楽しかった。
 ほんとに、ありがとうな」

真面目な顔でミヤは言った。

「うん、私もだよ。
 ……ねえミヤ――」

「うん?」

「……ううん、何でもない。
 おやすみなさい」

そう言うとミヤは微笑みながら無言で私の頭を優しく撫でた。

私はミヤの温かくて広いこの手に弱いみたいだ。

ミヤの手がゆっくりと離れると、もどかしい感情が溢れだし、彼の顔を見上げると、ミヤも同じ顔をして私を見つめていた。

――もう、寂しくはない。

後ろ髪引かれる想いと、愛しい気持ちで、彼の広い後ろ姿をずっと見ていた。

いつまでもこの甘い感情をを胸に秘めていたい。

ミヤに言えなかった好きという感情をぐっと胸にしまって、私はクラウンに入った。