酒でもクスリでもない。
私たちはネオンに照らされながら快楽と刺激に溺れていた。
「ハル、お前キレイだよ。
化粧だけじゃなくてさ、キラキラしてる」
ミヤは私の化粧に気付いてた。嬉しい。
女の喜びって、きっとこんなんだろうな。
「ミヤも、すごくいい顔してる」
そう言うと、ミヤは微笑み、私の手を引いた。
私は一瞬、ドキッとする。
やけに近い彼の顔がショッキングピンクにほのかに染まり、その目の中で理性とそれ以外の感情とが葛藤しているのを私は見逃さなかった。
その瞳をじっと見つめる私。
手を握ってしばらく黙って見つめあったまま、ミヤは少し困ったように笑った。
お前には敵わないよ、本能の色が消えた瞳でミヤがそう言った気がした。
「クラウンまで走るか」
「うん――」
返事をし終わらぬうちに、ミヤは手を引いて走り出した。
周りのネオンが人が、景色が、目まぐるしく変わる。
風をきる。
ミヤと初めて出会った時も、こうして走ったんだっけ。
歓楽街を爽やかな風が吹き抜けるように颯爽に走り、私たちは声をあげて笑った。
さっと横切る人やネオンを掻き分けて、私たちは歓楽街を全速力で駆け抜けた。