歓楽街に着くともう辺りは真っ暗で朝とは全く違う街だった。
やっぱり夜のこの街が、いちばん好きだ。
「ここからが本番だな」
歓楽街には、様々な人がいる。
妖気的な客寄せの女、チンピラ、サングラスにオールバックのいかついヤクザたち、ゲイボーイ、ヌードスタジオの女たち……。
ミヤは楽しそうに次々とシャッターをきる。
ここはまるで彼の楽園だ。
この街でミヤは闇と光と一体になって、その中を滑り、舞うようだった。
ゲイボーイからしつこくされた彼は「好かれちまった」と苦笑いをして、私も笑った。
すると、三十後半の強面をしたヤクザがミヤに近づいたのに、私はびっくりしてしまった。
「よう、いい女連れていいご身分だなァ」
そう声をかけられたミヤは一瞬顔をしかめると、やがて笑顔になった。
「フウさん!久しぶりだなァ!」
知り合いだったんだ。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「やっと出られたのサ。
いつ振りだ?オメェとこうして会うのもよ」
「大変だったんだな。
俺は最近帰国したばっかさ」
フウさんはへえ、と相槌を打つと私を見た。
どきりとした。
「ミヤの女か?
大変だろう、こいつも。
あっちこっち飛び回って、好き勝手しやがるもんな」
浅黒い肌に、黄ばんだ歯を見せてフウさんは言った。