ずいぶん歩くと、ミヤのアパートを越し、商店街の手前の路地に入った。
商店街に買い物に行ったり、働く人で活気がある。
「ここはお前の言うところの雑踏ってやつか?
人がゴミに見える?」
先ほどの私の言葉を引用してみせるミヤに、私は歯を見せて笑った。
「ううん、好きだよ。
落ち着くね。
なんだかあったかい」
そうか、とミヤも笑った。
「やっと笑った」
「え?」
「あのなア、朝一発目から怒らせちまったし、内心不安だったんだぜ。
でも、一安心だ」
そう言うとミヤは、私の頭を優しく撫でた。
そして再び背を向けると、また歩き出す。
ミヤの手からは沢山の優しさが伝わった。
私はその優しさに頬を少し赤く染めて、彼の広い背中を追ったのだった。