それから大通りに出ると、多くの通勤、通学の人たちをミヤはカメラに収めた。

騒々しい朝。

私は好まないのだけれど、彼にはぴったりだった。

洗濯物を干す母親、幼い子供、遅刻しそうになって走る学生。

この時間、朝の表の街ではこんな人だらけだった。

「ハル、たまにはこんな日もいいだろう」

歩道橋の階段を上りながらミヤが言う。

「うん。
 でも私はあの裏街が好き」
「どうして?」
「ここは雑踏してるし、人間がゴミみたい」
「ゴミ!」

それを聞いたミヤは声をあげて爆笑した。

橋の中央あたりで手すりに肘をつき、二人で街を見渡す。

「大人たちが聞いたら、このフーテンどもめ、なんて言われちまうよ」

「私たちの方がよっぽど懸命だよ。
 堕ちるとこまで堕ちて、それでも生きてる」

それから少し間があってミヤが噛み締めるように呟いた。

「そう、そうだな。

 うん、やっぱりお前を連れてきて良かったよ」

その時なぜ彼が良いと言ったのかは分からなかったが、私は尋ねなかった。

「よし、歩こう。
 俺の好きなメシ屋があるんだ。
 うまいモン、食わせてやるよ」

私が頷くと、ミヤは微笑んで歩き出した。