ミヤがそう言うと、厨房からミノルが呼び出された。
「あ、いけねえ!じゃあ、あとで行くからさ、向こうの話聞かせてくれよ」
そういうと、ミノルは中へ戻ってしまった。
私は去っていったミノルの方向を眺めながらつっ立っていると、ミヤが言った。
「クラウンに行くんだろう?一緒に行こうぜ。皆びっくりするだろうな」
そう言うと彼は扉を開けて外へと出た。
大通りを歩きながらミヤは、軽く自己紹介をしてくれた。
「俺は一応、流しの写真家やってて、昨日日本に戻ってきたとこさ」
「……写真家!?」
「という名のヒッピーだ」
彼は笑った。二重の広い彼の瞳が少し下がり、大きい口がきゅっと上がる。人懐こい笑み。
私にとってミヤは新鮮だった。異国の匂いも、独特の雰囲気も。未知の世界は、いつも私を誘惑する。
何にも無頓着の私は彼の輝く瞳に惹き付けられ、知らず、心を奪われていた。