その晩、仲間たちに今日のエミリーの話をすると、皆とても喜んでいた。

キッドは何も言わずに雑誌をめくっていたが、きっとやわらかい目をしていたんだと思う。

貴志は、あのあとから数日後、やっとクラウンに来るようになった。

けれど二人っきりになることもなく、これといって話しもしない。毎回のように私に投げかけてくれたあのまなざしも、今はない。

いつものように小説に没頭する彼のスマートすぎる横顔が、少し寂しかった。

私と貴志のほろ苦い経験は、とても不器用だけれど、こんな形で幕を引いたのだと思う。