私は仲間たちのことを話した。
力也の酒グセが悪くなり、クスリの量もひどくなっていること、ミノルが学生運動で顔に大きな傷を作ったこと。
貴志と私のことは、伏せておく。
エミリーは始終、嬉しそうに話を聞いていた。
「いつ、戻ってくるの?」
「まだ、分からないよ。
けど、いつかは来るからさ、あんたも頑張んなよ」
火のついていないタバコを弄びながら、いつものエミリーに戻っていた。
「……男ってさ、自分勝手な生き物なんだ。いつかは女を置いて消えちまうのさ」
ふっとそんなことを漏らしながら、エミリーは黙って窓の外を見つめていた。
私は何も言わなかった。
彼女の目には今、何が写っているのだろうか。
エミリーは
「ハルとこんなに話したのは初めてだね」
と、歯をかくして笑い、私たちは別れたのだった。
いつもの勝ち気な彼女の影はなく、哀愁に帯びたエミリーを、私は美しいと思いながら一度振り返ると、遠くで彼女は両手で顔を覆い、俯いていたのが目に入った。
ほんの数秒、私はそれを見つめただけで前を向き直すと、歩き出した。