それから数日後、エミリーはクラウンに顔を出さなかった。その間、キッドは何も言わないから、仲間もエミリーについては一切触れなかった。いや、触れてはいけない何かがそこにはあった。
けれど私は、一度だけ病院の目の前の並木に腰を下ろしてうなだれているキッドの姿を目にしたことがあった。店の中ではいつものように落ち着き払っている彼は、やっぱりボスであり、何といってもエミリーの男なんだと、そう思う。
そんなある日、偶然にも書店の前でエミリーと出くわした。最近、退院したのだという。
彼女の金色の髪は黒に染められ、艶々のボブでもなく、どことなく顔色も悪かった。
初めて二人で喫茶店に入り、ゆっくりとコーヒーを飲みながら語った。
「こんな私を笑わないでね」
と彼女は寂しく笑いながら言い、キッド以外のクラウンの仲間たちにはこんな私の格好、内緒よ、と言った。