「ハル、貴志とどこか行ってきたんだろう、どうだった」

キッドは歩きながら口で火のついていないタバコをもてあそび、ふいにそう尋ねた。

彼は貴志と私に何かあることを知っていた。

けれど私は特に驚きもしなかった。

「知ってたんだ」

「あぁ、あいつは女とあまり関わらないからさ、すぐに分かんのさ。

 ……で、どうだったんだ」

「……いいとか、悪いとかそんなんじゃないよ。……けど」

先程まで感じていた腑に落ちなさを何と言えばいいのか分からなくなって、私は黙りこくってしまった。

キッドはそんな私から詳しく聞こうともせずに、ぽつんと呟いた。

「分かるさ、そういうもんなんだぜ」

私の心中を知ったようにキッドは優しく言ってくれた。

どんなにもてても、毎夜違う女と寝てても、キッドはちっとも汚らわしくなんかない気がした。

キッドに分かってもらうだけで、何だか霧が少し晴れた。