ぼうっとデモ隊を眺めていると、その中にミノルを見つけた。

多くの人に混じり、メットを被った彼は拳を突き上げて一心不乱に叫び散らしている。

彼は、女を忘れるためにデモに参加しているように見えて仕方なかった。

私はそんな彼を見ると、なんだかおかしくなって、思わず顔がほころんだ。

彼、すごく生き生きしてる。

そんなことを考えていると、うしろから肩をたたかれて低い男の声がした。

「君、ヒマ?ヒマなら…

デモ、一緒に参加するか」

そんな言葉に私は驚いて、ばっと振り返ると、馴染んだ顔があった。
 
長身で白いシャツと革のズボンに身を包んだキッドだった。

つい、笑みがこぼれるとそんな私を見て、キッドも目を細めた。

「ハル、どうしたんだ、こんなとこにつっ立って。
デモ隊に踏み潰されちまうぜ。

ん、まさか本当に……」

いたずらっぽく笑うキッドの後ろを黙って指差すと、キッドは言葉を止めて、視線を向こうにやった。

群集の中からミノルに気がつくと、

「あのヤロウ、荒療治ってわけだな」

と呟き、唇の右端を上げてふっと笑った。