久々に川端康成の描く美しい物語を読みたくなって私は古都を手にし、店を出た。
それからあてもなく裏街をぶらぶら歩いていると、学生運動があっていた。
何人もの若くて活気のある男たちがメットをかぶって棒を振り回しながら列をなし、叫んでいる。
道路の中央をぶんどって、機動隊はいなかった。
周りの観客はそんな彼らに野次を飛ばしたり、見向きもせず端をすり抜けたり、一緒に参加したり、又は私のようにただ眺めている者もいる。
学生運動は何かの起爆剤のように、その場を一気に飲み込んで人々を熱くしてしまう。
何かの魔術のように、この場は一瞬にして狂ってしまったようだった。
彼らは、見えない敵と戦っているようだった。
一心不乱に熱くなり、狂ったように何かにもがく姿はまるでこの時代に逆らおうとする、私そのものだった。
私は、人間がこんなにバカみたいに一つに熱を持っている姿が、とても好き。
すごく人間らしいと思うから。
不良と呼ばれるクラウンの仲間たちだって、ヒッピーやってるキヨミちゃんだって、何かにしがみついて、必死にもがきながら生きている。
それはとても人間くさい。
汚いところは全てさらけ出して、むしろ美しかった。
人間の汚いとこなんて隠せやしないし、きっと無理に隠すものじゃない。
隠せば隠すほど醜くあらわになってしまう。
だから、彼らが、この街が、とても好き。