その部分では、私たちは相性が良かったんだと思う。

ただ、気心の知れた友人として。

彼には魅力がなかった、そう言えばウソになるのだけれど、やはり私には、貴志とは今の関係以外には何もあてはまらない。

気が付くと、私と貴志はクラウンの前に来ていて、私はまだ店に入る気がなかったので、書店に用があるの、と彼に告げた。

それから、今日はありがとう、と頭を下げて彼が優しく笑ったのを見てから立ち去った。

なんだか私の中は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

しかし、それ以上に晴れないのはきっと貴志の方に決まってる。

初めて味わった、黒色に染めても隠せないほどのもやもやした気持ち。

そんな気持ちをかかえたまま、私は古びた書店へ向かった。