貴志は、その透き通るような瞳で私をじっと見つめ、笑顔でチケットを差し出した。 それは「トウキョウ座」の映画のチケットだった。 「明日、昼の三時。"トウキョウ座"で待ってるから」 彼はそう言うと背を向けて、来た道を引き返し、重々しくも恍惚と輝くネオンと、人ごみの中へ消えてしまった。 ずるい人だと、私はそう思いながらチケットを掴み、雑踏する歓楽街でしばらくたたずんでいた。