貴志はそう答えて力也の隣に腰を下ろすと、私に気づき、
「来てたのか」
と言うと優しく微笑んだ。
彼がいつも私にこんな表情をする時、決まって彼はきっと、私に恋心を持っているんだろうと思わずにはいられなかった。
そんな私はにこりともせず、貴志に軽く頭を下げた。
貴志はこのグループの中でいちばん爽やかな好青年と言ったところで頭もバツグンにいい。東京の一流大学に通っている。
喧嘩もあまりやりたがらず、線の細い青年だった。
そんな貴志とは対照的に兄の力也は腕っぷしがよく、喧嘩っ早い男だった。
きっとキッドよりも喧嘩は強いはずで、チンピラからしょっちゅう金をまきあげていては、彼のモットーは対等な喧嘩しかしない、というものだった。