それから思わず足を止めて、貴志の目をじっと見つめた。
「ひりひりして、嫌に痛むの」
「俺もだ」
貴志は、溢れる感情を抑えられないでいた。
「何の痛みだろうって、ずっと考えていた」
私は、答えた。
「証だよ。私たちだけの、青春の証」
貴志は、私の目から視線をそらし、どこか遠くを見つめた。陽の落ちた、橙色の夏空だった。
「あれは……確かに青春だったんだな」
貴志は噛み締めるようにしてそう言った。
「そうだよ」
そう言って、横顔の彼の目を見ると、先ほどまでの刺激的な感情は晴れ、澄んだ目に変わっていた。私たちは、どこか一つの終着点に辿り着いたようだった。
残りの道のりを歩き、再び立派な門のところへ到着した。すると、そこにはショートヘアの女性が一人、礼儀正しく立っていた。
彼女は私に気がつくと、深く一礼をした。