庭を出て、家の周りの路地を三人で歩く。

カオリの小さい歩調に合わせながらゆっくりと歩いていると、貴志は切り出した。

「もう、キッドが死んでから五年近くたつんだな。……こうしてみると、五年なんて短いよ」

五年。たったそれだけの歳月なのに、もう過去は過去で定着してしまっている。私は少し恐れを感じた。

「たまに、クラウンでの毎日は夢だったんじゃないかって、そう思う。毎晩ジャズを聴きながら、アルコール臭や、タバコの煙に囲まれてさ。帰り道の、服や肌にこびりついていたその匂いが、こんなにも愛しいなんてな」

そう言う貴志の瞳には、あの頃のあつい光が灯っているようだった。私は、その懐かしい瞳に、思わず吸い込まれそうになった。

「キッドが死んだとき、俺は完全に目が覚めてしまったんだよ。ああ、青春が終わったんだな、って。でも……あれはやっぱり、夢ではなかったんだな」

「私も……。私も、信じられないの。でも、時々痛むのよ、この傷が」

私は、自分の胸に手をあてた。