彼は少し困った表情をしていたけれど、私たちを快く歓迎してくれているのが伝わった。相変わらず大人びた雰囲気も、その爽やかさも、何も変わっていなかった。私は、懐かしいような、少し切ないような気持ちがじわっと広がるのを感じて、微笑んでみせた。
「久しぶり、貴志」
「久しぶりだな。わざわざ来てくれて、ありがとう」
そう言うと、彼は、視線を落としてカオリを見た。彼は、全てを悟ったかのように、暖かくも、少しやるせない顔をした。
「この子は……」
「そう、ミヤと、私の子ども」
「そうか」
そう言っただけで、貴志は何も言わなかった。相変わらず不在であるミヤの様子を感じ取ったようだった。そんな貴志を、カオリはくりっとした目で見つめている。
「ミヤにそっくりだな」
「そうかな」
「うん、この目。じっと深くまで見つめるハルの目と、きらきらしたミヤの目だ」
そう言うと、貴志は軽く触れるか触れないかくらいにカオリの頭を優しく撫でた。その薬指に光る指輪があるのを、私は見逃さなかった。