愛娘への愛と、彼女の中のミヤへの愛は、何にも変えられぬものだった。今度は、誰かに強さを与えてみろ、と、いつしか言われた言葉を、死んだはずのキッドが言っていた。



夏はもう、そこまで来ている。

むっとした暑さが私を襲う。子どもはどうしてあんなに元気なんだろう。カオリは近所の友達と外で遊んでいる。この部屋の窓から、無邪気な笑い声が時折風に流れて聞こえてくる。

今日は仕事が休みだ。扇風機の前で、かつてキヨミちゃんがくれた本を読み漁る。遠くから聞こえる娘たちの声に安心し、私はいつの間にか壁に寄りかかったままうたた寝していたようだ。

目を覚ましたのは、電話のベルの音だった。けたたましく鳴るベルに急かされ、私は、よいしょ、と重い体を起こして受話器を取った。

「はい」

「……ハル?」

私を呼ぶ声。受話器の向こうから、懐かしい声がした。

「貴志……?」