「これ、ママ?」
ずっと変わらずに飾ってある、クラウンでの仲間との巨大な写真。確か私の誕生日だった。写真の中にいる私を指差して、カオリは言った。
「そうよ」
「かわいいね」
私は、カオリの隣にかがんだ。
「ママの大切な友達」
この写真の中は、永遠に青春である。不思議だ。
「この人が、カオリのパパ」
私はそう言って、写真の中で笑うミヤを指差した。
「カオリの、パパ?」
「うん、パパ」
カオリは、目をまあるくさせて、食い入るようにして写真を見つめた。そして、こう言った。
「パパ、とてもかっこいい」
◇
それから私は職を探し、ようやく見つけたのはコーヒー喫茶だった。
朝から夕方まで、せっせと働いた。夢もなければ、頼る人もいない。ミヤや仲間のいないこの色褪せた世界を生きるのは、とても容易なことではなかった。
それでも、必死に生きることができたのは、カオリの存在があったからだった。