それでも、時は残酷にも刻まれ続けていた。それはもう、私にとっては色褪せたものでしかなかった。
「新しいおうちだ……」
鍵を開けて中へ入ると、娘は瞳を輝かせながら中へと入っていった。重たい荷物を畳の上に乗せると、辺りをぐるりと見渡す。部屋が、とても窮屈に見えた。
中は相変わらず殺風景だった。合鍵を持っているミヤは、一度でもこの部屋を訪れたろうか。そして、私の不在をどう思っただろう。ふと、机の下に、ぐしゃりと丸められたタバコの箱があるのに気付いた。
「わあ……きれい」
娘は、城の中にいた。その方向を振り返ると、私は思わず息をのんだ。
娘は、城の中央に立っていた。そして、四方をぐるりと、真っ青な空の写真が無造作に敷き詰められていた。
この部屋を出たときは、確かに灰色のような歓楽街の写真で埋め尽くされていたのに……。ミヤは、こうすることで私の帰りを待っていたのだろうか?
私は、鼻の奥がつんとするのが分かった。