「戻ってくるか?」

白井は相変わらずラフな感じで私に尋ねた。

「うん、きっと」

「元気でな。子ども、生まれたら連れてこいよ」

「分かった。約束だね」

私たちは言葉を交わすと、そばにあったカラのグラスを高くかかげ、何も言わず乾杯した。

階段を上がり、重たい扉を開けると、眩い光に思わず目が眩んだ。表の、新しい時代がもうすでにここまで来ている。

もう、ここは私のいるべき場所ではなくなりつつある。

そう、もう終わったんだ。傷だらけの青春は、その痛みだけ残して形を消してしまった。それでも、ずっとリアルだった。あの頃の傷は、この胸の奥にしまってある。誰も見えない。けれど、私たちはずきずきと痛むたびにあの時代を思い出す。私たちだけのシグナル。

私たちの時代は、こうして幕を下ろしたのだった。