「不安なんだよ。写真を撮っていなきゃ、俺の全ても、そしてお前も、全部失ってしまうのさ」

ミヤは、私に向けた広い背中を丸くした。表情は全く分からない。でも、こんなにぼろぼろで、不安定なミヤは初めてだった。

いつものミヤは、いつも私の上にいて、新しい世界を切り開いて見せてくれた。時代の中で躍動し、ゴールドの髪の色にも負けないくらい、きらきらと輝いた瞳をしていた。

それが今では、二人して悪循環に陥ってしまって、お互い灰色に染まり、出口が全く見つけられない。ねぇ、どうしたら私たち幸せになれるの?

「……馬鹿だよ、本当に」

私は言った。

「私は、ミヤが側にいてくれるだけで、幸せなんだよ」

私は前髪をぐしゃりと掴み、俯いた。

ぱたん、とドアの閉まる音がした。

もとのようにがらんとした部屋には、私の痛切な音だけが、寂しくこだましている。せっかちな写真家は、またもやさっさと旅に出てしまった。