しかし、キッドはエミリーを一番愛していた。
キッドを目の前にして頬を赤らめ、すぐに態度を変える女たちとは違って、エミリーはとても凛としていて、美しかった。
彼女はそんな女たちにも、そしてキッドにも目もくれないから、キッドはエミリーのそんな所に惚れ込んでいるのだと思った。
今だって、その二人は隣に座っているだけで、エミリーは足を組んでタバコをもてあそびながら物思いにふけり、キッドは雑誌相手に黙りこくっている。
ミノルもこんなんだから、誰も言葉を交わさない。
張りつめていて、けれど気だるい空気の中で、私は何をするわけでもなくこの時間を感じるのが大好きだった。
そのとき、勢いよく扉の音がして荒々しく二人の青年がこちらへやって来た。