海に着き、車を浜辺に止める。この時期は人一人いない。確かこの前もそうだった。車から降りると、私は羽織ったコートを翻しながら砂浜を歩く。
「ハル、写真撮っていいか?」
振り返ると、車のドアを開けたまま立っているミヤがいた。
「どうしたの?」
突然改まったようなミヤを可笑しく思いながら、私は言った。
「一度、黙ってお前を撮った時はすげぇ怒られたしな」
ミヤは笑って言った。
気ままに浜辺を歩く私と、シャッターを切るミヤ。前に来た時は、お互いはしゃいで写真を撮り合ったりしていたけれど、今日は全く雰囲気が違っていた。
こうして何も話をしなくとも、ただ気ままに歩いていたり、お互いが別のことをしていても、ミヤと繋がっていられるのは、嬉しい。何かが崩れなければ、私とミヤはこの絶妙なバランスで、ずっと生きていける気がする。