玄関の電気をつけた時に、私は思わずはっとした。

――うそ、まさか?

私は、それを目の前にして固まってしまった。無造作に脱ぎ捨てられた、大きな靴。

私に呼吸を整える余裕なんてなかった。しどろもどろになりながらも、ピンヒールを脱ぎ捨てて、中へと入った。

中は真っ暗なだけで、誰もいなかった。でも、……彼はいたのだ。お城の中に――あぐらをかき、広い背中を向けて、クラウンでの集合写真を見上げて――月の光でそのゴールドの髪色がいっそう輝いてみえる――。

「おかえり」

間違いなかった。ずっとずっと、待ち焦がれていた、そう、ミヤだった。

「……うそ……」

そう言うのが精一杯の私を見て、ミヤは大きな口から白い歯をこぼす。

「うそだと思うか?」

彼の透き通った彼の瞳が、私を見つめている。私は思い切り首を横に振る。

まだ実感の湧かない私の腕を掴み、ミヤは彼の胸に私を引き寄せた。

「……ハル……」

私は黙ったまんま、彼の広い胸に顔を強く埋める。