重い足取りのアパートへの帰路。昨夜の抗争が嘘のように静かで、いつものようにネオンが灯っているだけだ。

「……結局、何も変わらないんだ」

私たちがいくら時代の波に抗ったって、時代というものは、お構い無しに私たちの今を置いて次へ進んでしまう。失いたくないものだって、気付けば手元からはなくなってしまっているに決まっている。いつの間にか、学生運動家さえも、消えてしまうんだろう。

色の見えないほど鮮やかすぎる表からの光が、いずれこの歓楽街をも飲み込んでしまうのだ。目には見えないだけで、今もこの街を侵食しているかもしれない。本当に分からないくらい、ゆっくりと。

アパートの階段を上り、鍵を取り出そうとしてバッグをまさぐっていると、ドアが少しだけ開いているのに気が付いた。

不思議に思って中を少し覗くけれど、電気もついていない。完全に閉め忘れだと思いながら、私はドアを開けて中に入った。