汚いテーブルの上には、キッドの愛用していたクセの強いタバコの箱がある。 その香りは、エミリーの刺激的な香水とマッチした。 ――そんなわけあるか。俺はこの時代と、この街が大好きなんだぜ。 そんなキッドの言葉が、ふいに蘇る。 「キッドとエミリーは、一生このまま、この時代とこの街を愛し続けるんだね」 けれど、自ら命を絶った理由は、あの重い背中を知った私だけが、分かるような気がする。 「羨ましいな」 貴志が相槌を打った。