いつもの場所には、力也と貴志がいた。
力也は、キッドがいるはずのソファーで項垂れ、貴志は、ぼうっと一点を見つめている。
そこに言葉はなかったけれど、私は実感した。
あ、本当に死んじゃったんだな。
言葉で知らされるより、ずっと、生々しく。
一人、息を切らした私の荒い呼吸だけが、異様に静まりかえったこの空間で、いたく響いている。
走り終えたはずの胸の鼓動が、ますます激しくなっていた。
コルトレーンのサックスが、哀しいメロディを奏でていた。それはただの雑音のように体に侵入し、心を灰に染める。
「……キッドとエミリー、死んじゃったの?」
魂の抜けたような力也を見ると、駄目だ、涙が溢れそうになる。
うつむいていた貴志が軽く頭をあげて、小さく言った。
「はかないというか……一瞬で散ってしまうものなんだな」