クラウンの前でマスターに会ったのは、あれから三日ほどたった後だった。
顔馴染みの私に気が付くと、彼はタバコを持った手を上げた。私も、軽く礼をする。
マスターの前を横切って店のドアに手をかけると、彼が渋い声で私に言った。
「お前たちも大変だろうナ、キッドとあの女……」
そう言って顔をしかめると、彼は眉を寄せてタバコを踏みつけた。
「……皆、帰って来るって信じてますから」
私がそう言うと、マスターは更に眉間に皺を寄せて不審そうに私を見た。
「……まだ、知らないンだな」
低く、唸る。
「えっ?」
私が呆気にとられた様子を見て、マスターはひとつため息をついた。
「……キッドとあの女、昨夜……心中、したんだ。二人で、入水自殺だとよ」