「お前は強くなったよ。
 もう大丈夫だ、一人でも生きていけるさ」

「強い?」

「そうさ。だから今度は……誰かに強さを与えてみろ」

私の目をじっと見つめながら、キッドはそう言った。
そんな彼に応えるように、私も力強く頷いてみせる。

キッドが私の力になってくれるように、ミヤが遠い所でも私を愛してくれているように。

「お前も大丈夫そうだし、俺ももう行くからな」

キッドはタバコを踏み潰すと、そう言って立ち上がった。

「……早く、戻ってきてね。クラウンで待ってるよ」

それを聞いたキッドは、小さく呟いた。

「じゃあな」

キッドはそう言って、どことなくぎこちない笑顔を向ける。

私が頷くと、キッドは背を向けた。闇に飲まれる彼の背中を見つめる。

いつもスマートに生きているキッドには悩みがあるのだろうか、なんて思っていた自分を恨んでみる。

彼の暗く、重苦しい背中は、たちまち暗闇に飲まれてしまった。