二人で噴水に腰掛けたまま、しばらく黙っていた。

久しぶりに座るキッドの隣は嬉しかったけれど、やっぱりいつもより冷たくて、キッドの何かが物足りなかった。

「なァ……ミヤはよ、ハルに関しては俺にでさえ何も言わなかった。

 けど、昔さんざん女と遊んで、一緒に悪いことしてきた俺に、言ったのさ」

キッドは不意にそう漏らした。

そういえばミヤからその話は聞いたことがあって、彼の過去を知った時の私は、意外な彼の姿に驚いたものだった。

「何て?」

「無条件で多くの女を、欲望の中で抱いてきたこの俺の手を、ハルは嫌うかな、ってさ」

――ザザァーン……

波の音と共に青い空と海とが、私の脳裏ぱあっと広がった。

あれは夏の過ぎ去ったあとの、涼しい秋の日だった。