キッドと暫く黙って歩く。
木々はもう、葉が落ちていた。
クラウンの近くの噴水に、二人で腰かける。
あの夜、ミヤと二人で誓った愛がよみがえり、胸が苦しくなった。
あれは、私の誕生日だったっけ。
「ハル……痩せたろう」
「……」
沈黙が流れる。
「ハル、クラウンに来ねェか。
皆、心配してるぞ。顔出すだけでもいいさ」
私は、何も答えなかった。
キッドが、小さくため息をついた。
キッドは優しい。
私はこうして何度も彼に助けられてきた。
私は初めて、キッドに助けられたあの夜を思い出していた。
「ねえキッド」
「ん?」
「あの夜は、雨が降ってたね」
「エ?」
「キッドに、拾われた日だよ」
私がそう言うと、キッドはしばらく考えてから思い出したように、そうだな、と呟いた。