箪笥を開けても、押入れを開けても、すべての引き出しにミヤに通ずる物は何ひとつなく、もぬけのからだった。
部屋にひとつ、とぐろを巻いた布団があるだけ。
その布団の中にはミヤの温もりが冷めずに、包み込まれているんだろうか。
崩してしまえば、ひとたび、その熱が散ってしまいそうなので、そっとしておいた。
ミヤが去ってしまったのだと、ここへ来て強く再認識された私の胸には、やるせない気持ちが蔓延し、脱力してその場にへたりと座り込んだ。
言いようのない悲しみと、虚しさと、怒りとが込み上げ、私はひとしきり、声を殺して泣いた。
手元にあった部屋の鍵を、やりようのない、もどかしい私の想いをぶつけるかのように、力いっぱい投げつけると、一枚の襖に当たって、跳ね返った。
私の右側には大きな襖が一枚、そびえたっている。
――私の城。
けれどその襖にも、手をかけなかった。
これ以上、心を乱したくなかった。
それから数日後、私はキヨミちゃんのとのアパートを去り、ここへ引っ越した。