私は全てを悟った。
薄くかかった霧の向こうに、彼は消えてしまった。
自分の足で旅に出た。
全身の力が抜け、歓楽街に私は崩れ落ちた。
行き場のない喪失感が、へたりと座り込ませ、私は道路を、ひとなぐりする。寒さでかじかんだ手は余計じいんとしたけれど、それでもまだ足りない。もうひとつ、ふたつ殴ったところで私は呟いた。
「離れないって言ったのは自分じゃないか……」
ミヤにすがるように呟いた私の言葉が、誰もいない歓楽街にがこだまする。
言い表せることのできない喪失感が心を掴み、彼を失った私の心が、彼のいないこの街や世界の色彩を奪い、ゆっくりと色あせてゆくのが分かった。
なんにも変わらない。
すべてが崩壊した。
「ハルちゃん!」
背後から白井の声がした。