私は、隣で覗き込んでいるミヤに尋ねた。

「ねえミヤ、どうして写真を撮るの?」

私の問いかけに、ミヤはうーん、と唸った。

「時代や世界って常に変化するものだろう?
 それをカメラに収めてみたいと思ったのさ」

そう言うとミヤはコーヒーをすすり、カップを机に置いた。

湯気のたつそのカップを見つめたまま、ミヤは続ける。

「だから俺は、写真家として、この時代に生きる人間として、この時代を後世に伝える役目がある」

そう言うミヤの瞳の奥に強い光が灯るのを見逃さなかった。

「……まァ、写真とこの時代が、一番気に入ってるってコトよ」

「それじゃあ、どうして私に写真を教えてくれたの?」

素朴な質問を彼にぶつけてみた。

ミヤが私を振り向き、彼の真っ直ぐな視線が、私を捕えた。

――あ、来る。

私は逃げもせず、彼の腕は私を捕まえ、一瞬からだを強ばらせた。

ゆっくりと押し倒されて私はぐちゃぐちゃの毛布の上に仰向けになる。

恥ずかしくて目を反らしていると、ミヤの大きい手が、私の頬を包んだ。

鼻と鼻がくっつきそうな距離で見つめ合い、ミヤの顔を見てみると、その瞳は心なしか潤んでいるように見える。

吐息と吐息とを交えながら、私たちは随分長く、そうやって見つめ合っていたのだと思う。