翌日、キヨミちゃんを駅に見送りに行くと、相変わらず駅は混んでいた。
電車が来るまでベンチでキヨミちゃんと話す。
「この電車乗ったら、今までのこと、夢みたいに消えちまうかな……」
キヨミちゃんは前を見つめたまま呟いた。
いつもの華やかな紅のルージュがないその横顔には寂しさが見え隠れしていた。
「ヤになったら、また戻ってきて、夢、見ればいいよ」
キヨミちゃんはそうだね、と相槌を打った。
この街が夜になれば、必ず同じ顔して歓楽街は私たちを待っているとばかり信じきっていた。
永遠に。
時の流れに逆らえるものは、何一つ存在しないのに。