朝、目を覚まして台所へ行くと、ちゃぶ台に突っ伏しているキヨミちゃんがいた。
昨夜の酒の缶はきれいに捨てられていたけれど、私は不審に思って彼女に声をかけた。
「キヨミちゃん?」
一瞬間があって、顔をあげたキヨミちゃんの目は真っ赤に腫れていた。
私は驚いて、どうしたのか尋ねると、彼女は重々しく口を開いた。
「ごめんね……ハル。
私、実家に帰るんだ」
あまりにも突然すぎる言葉を聞いて私は固まった。
「さっき実家から電話があってね、お父さん、倒れたって。
私も心配だし……もう実家帰ってきちんと仕事もしてさ、ちゃんと暮らすよ」
「……いつ帰るの?」
「明日の昼。
ごめんね、迷惑かけちゃって。
今月までは家賃、半分払わせてね。
ほんとに、ごめんよ」
私は何も言わずに、ぶんぶんと首を横に振った。
こんなキヨミちゃん、らしくない。嫌だ。
窓から差し込む朝の光はやけに白くて、色さえ見えない。
私たちは黙ったまんま、ずっと二人で座っていた。
別れの朝っていうの、こんな感じなのかな。
寂しすぎるよ。