私が隣に座ってもミヤは気付かない様子でうずくまっていた。
「……ミヤ?」
私の呼びかけに体をびくっとさせて、ゆっくりと顔をあげる。
眠たそうな顔。
「寝てたの?」
「ん……夜風気持ちよくってさ、酔い覚ますつもりで腰掛けてたら、眠っちまってたな」
そう言ってミヤはゴールドの色した髪をがしがしとかきむしった。
「ミヤ、カメラありがとう」
「ああ、いいんだよ。
それより、あんだけしかしてやれなくて悪かったな」
ミヤはそう言うと、ポケットからタバコを一本取り出して口にくわえた。
「……タバコ、吸うんだ」
私が驚きながら言うと、ミヤはライターを持つ手を止めた。
「あァ、いけねェ。禁煙してたのによ。
……まァいいか。
今日はお前のめでたい日だしな」
そしてカチッと火をつけるとおいしそうにタバコを吸った。
「なんだよ、そのこじつけ」
半ば呆れて言うと、ミヤはタバコをくわえたまま笑った。
「……ねえ、おいしいの?
ちょうだいよ」
クラウンではキッドと力也がヘビースモーカーで、エミリーとミノルがタバコを吸うのをたまに見かける。
私と貴志以外が喫煙者で、無論、興味は少なからずあった。