たわいもない話をしていると、急に柊くんは真面目な顔になる。

そして、大きく息を吸い込んでギターと一緒に唄い出した。



この顔になった瞬間、柊くんは私と別の世界の住人になる。



夢に向かって努力している人の顔。



尊敬したし、ちょっと妬ましかったし、なりより羨ましかった。

音楽が好きってだけで、ギター1本持って、見ず知らずの通りすがりの人に自分の音を伝えよう、
なんてすごい勇気だと思った。



私は、この時の柊くんの横顔が好きだった。



たとえ誰が立ち止まってくれなくても、柊くんは格好良かった。