「私、燃えるようなことないもん。」
唇を尖らせながら柊くんを見た。
柊くんには唄があるけど私には何もない。
他の人に言われたらむっとするはずの言葉なのに、柊くんに言われても不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
彼の穏やかな話し方のせいかな。
「ついでにもう1つ言わせてもらうね。」
しゃがんでギターをいじる柊くんに言った。
「私は『かりん』じゃないからね。」
柊くんはギターから目を離して私を見て、またにっこり笑った。
「知ってる。
でも『かりん』がぴったりなんだよね。」
言いながら、ギターの音の調律を始めた。