「どうしたん?
あまり乗り気じゃない?」

「そういうわけじゃないの。
ちょっと……」

「ちょっと?」

「……なんでもない。
早く先行きましょ」

彼女が何かをいいかけて止めたとき、
どれだけ追求しても答えてくれないことと、
どんどん不機嫌になっていくのは、
今までの経験でわかってたから、
僕はそれ以上追及しないことにした。

とりあえず、彼女のぬくもりを感じていられればいい。

あまり欲を出していろいろ望みすぎると、
よくないことが待ってるから。

それも経験でなんとなくわかっていることだった。

「あの位置からの写真もいいのが撮れそう」

彼女が手をはなし、かけだす。

「あっ……」

僕はゆっくりと腕が下がっていくのを感じながら、
離れていく彼女の背をみていた。

追いかけようとする。