ドクンッ……。

心臓が、大袈裟に反応した。


椅子から立ち上がって、しゃがんだ俺を見下ろす中村。


ムッとしているわけでも冷たいわけでもない、無表情。

やはり、凛とした瞳は綺麗だった。


俺はペンと筆箱を両手に抱え、ゆっくりと立ち上がった。


「ごめんな?」


言いながら机にそれらを置く。


すると中村は何も言わず、微笑んだ。

ほんの少し目を細め、ほんの少し口角を上げるだけの、小さな笑顔。


……笑うんだ。


そんな事ニンゲンなら当然なのに。

中村が微笑みかけてくれた事が無性に嬉しくて、俺も笑みを浮かべた。


軽く微笑む程度のつもりだったのに、顔の筋肉のコントロールが上手く出来なくて。
満面の笑みになってしまっていたと思う。


中村の笑顔を、もっと見てみたいと思った。


なのに──……。