さっきよりもさらに目を見開き、その表情は引きつってて。


「……な、んで知ってるの……?」


発せられた声まで動揺してる。


……なんだ?これ。


なんでそんな目泳がせてんの?
俺に知られちゃいけなかったの?


「偶然見かけたから!」

「え……何話してたかとか、聞こえた?」

「いや、そこまでは……ってか、マジあれ誰!?」


そこで。
『いや、そこまでは』って聞いたとこで。

明らかに、中村が安堵の表情を浮かべた。


……目の前が、真っ暗になった。


「お、おい!翔真!?」


履き替えたシューズのかかとを踏みつけたまま歩き出した俺を、友人の声が追い掛けてくる。

俺はその声を無視して、校舎の奥へ歩き続けた。


何も聞きたくない。

イライラとムカムカで、吐き気さえする。


中村を見たくない。


溢れかえる醜い感情を止められない。


シューズのかかとを踏みつけたままだと階段はのぼりにくくて、それにまたイライラしながら……なぜか、泣きそうだった。